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自動車、電機電子などの製造業における設計現場では、3次元CADシステムが広く普及し、設計データは3次元形状としてデータベースに保管されています。
また、製品の性能や品質管理に必要なCAE解析シミュレーションデータや製造プロセスに必要な金型製造カッターパスデータなどの重要な情報も3次元化され、設計形状データと共に保管されています。
一方、AIの一分野であるディープラーニング技術は、2012年にカナダ・トロント大学が画像認識国際大会ILSVRCで優勝したのを皮切りに、画像認識、翻訳、医療診断など様々な分野で躍進を遂げています。今やディープラーニング技術は「国力を左右する重要な科学技術」という不動の評価を確立し、各国の産業界/学術界が競って研究開発しています。
画像認識はディープラーニング技術が特に研究開発されている分野の一つです。画像は2次元の画素ピクセルマッピングで構成され、縦横の解像度を掛け合わせた数、さらにカラー画像の場合はRGBで表現される色情報を掛けわせた数のデータ量になります。たとえば1024×768カラー画像の場合、2,359,296です。
このサイズのデータをニューラルネットワークで学習するには大きすぎるので、画像の特徴をできるだけ損なわない方法で、学習できる適切なサイズにデータを縮小する必要があります。従ってディープラーニング技術で画像を認識するAIモデルには畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)が多用されています。CNNの畳み込み、プーリング処理を用いて画像内の空間的、時間的な依存関係を正常に取得しながら圧縮しなければ、ニューラルネットワークを用いた計算は困難です。
先に説明した通り、製造業の設計データはすでに3次元化し、3次元CADやCTスキャンされた形状データとして保管されています。 保管形式はNurbs(曲面)、ポリゴンメッシュ(三角形)、ポイントクラウド(点群)、ボクセルグリッド(立方体)などが主流ですが、画像と同様にニューラルネットワークで扱うにはいずれもデータ量が多く、何らかの手段で圧縮する必要があります。3次元形状認識にも2次元画像と同様の畳み込み技術が必要になります。
2次元画像のCNNは画像ピクセルの2次元配列を利用しています。画像ピクセルの配置が固定されているため、固定された形状とサイズのフィルターで畳み込み、プーリング処理が可能です。
一方3次元形状データのフォーマットであるポリゴンメッシュを例にとると、一般的に節点に接続する要素エッジの数が固定されていないため、画像のように固定されたフィルターが使用できません。 また、別のフォーマットのボクセルメッシュについては、構造は3次元空間で固定され規則的ですが、中実構造でデータが立体内部に至り、データ量が膨大になります。
2次元画像と根本的にデータ構造が異なる3次元形状データの畳み込みをいかに克服するかが課題になります。
アストライアーソフトウエアは最新のCNN研究成果に基づき、3次元形状データの畳み込みに成功しました。対象となる3次元形状データは、3次元CADで汎用的に利用されている三角形ファセットによる表現形式のSTLフォーマット、またはOBJフォーマットです。またCAE解析データで多用されている三角形、または四角形のメッシュデータも同じフォーマットで利用できます。
AIモデルが3次元形状を認識できれば、製造業の設計現場において形状識別、類似性判断、新形状合成などに応用できます。
形状識別は入力された3次元形状をあらかじめ定義されたクラスに分類する作業で、たとえば入力されたボルト形状をボルトヘッドの形状で、六角ボルト、マイナスボルト、六角穴ボルトのように識別します。これには教師付きデータを用いたトレーニングを行います。
類似性判断は入力された形状に似通った形状をデータベースから検索します。形状の特徴量を抽出し、データベース内で既存形状の特徴量と比較しますので、VAE(Variational Autoencoder)やGAN(Generative Adversarial Networks)などの生成モデルを用いながら、適切な特徴量を抽出できるようにトレーニングを行います。
新形状合成は類似性判断と同じく適切にトレーニングされたAIモデルから抽出された特徴量ベクトルを、複数の形状についてブレンドし、新しい形状を自動的に生成します。たとえば既存の複数の車体について、それらのテイストをうまくブレンドしながら新しい車体モデルを生成することができます。
形状識別ができれば、たとえばCAE解析用にメッシュモデルを作成する作業において、CADモデルにあるボルト形状を識別し、そのボルトタイプに従った結合モデルを自動挿入できます。
類似性判断ができれば、手元にある新設計形状について、データベースから既存の類似形状を検索し、その形状に紐づいたCAE解析シミュレーション結果や金型作成時のカッターパス情報などの設計データを取得できます。
形状合成ができれば、既存の製品モデルの特徴量をブレンドし、新製品形状を自動合成できます。
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